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未知夢

第15章 隠人

 二人は顔を見合せ、大人しく繁に従う。


「話は聞かせてもらいました。綾子さん、実際はこの男(この世界の繁)は犯罪者。匿うと、あんたまで罪に問われる。だが、今の綾子さんの話だと森屋は泥酔していて何も覚えてないと言う。だから、この世界の者じゃない俺が自首する。俺がやったと言えば、すべておさまる。指紋も全部同じだからな」


「でも……」


「いや、この方がいいんだ。俺はここにいてはいけない人間。まったく同じ人物はいないんだ」


 繁がそう言うと、繁(2号)が指を差して言った。


「いや、この人は俺じゃない。俺なら、こんなシッカリ物が言えないし」


「こんな直面に出くわしたらきっとそうなる! だから、後はまかせろ」

 繁は綾子の方に目を向けた。


「綾子さん、俺もこいつも、一生あんたのファンです。会えてよかったっす」



 綾子は深く、頭を下げた。


「繁さん……お礼を言うのはこっちの方です。ありがとうございました」



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