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未知夢

第15章 隠人

「いえ、とんでもない。ちなみに、知ってると思うけど、俺が住んでたこのアパートの俺、ま、今は2号の部屋だけど、10年前は君のお父さんが住んでいたんだ」


「えっ!!」


 綾子は驚いた。


「知らなかったの?」


「知りませんでした……お父さん、私が小学生の頃にお母さんと別居して……」


「まあ、事情もあるだろうから詳しくは聞くまい。今はとりあえず逃げるより、大人しくしておいた方がいい。2号、とりあえず二人で部屋に待機しておいてくれ。買い物とかは綾子さんにまかせて部屋から出ないように」


 繁の言った事に二人は頷いた。


「じゃ、頑張れよ」と、繁は軽く手を振ると、その場を後にした。


「あっ!! 1号!! せっかく会えたのに……」


 この世界の繁は突然の出会いと別れに、戸惑いを隠せない。


 綾子は繁の気持ちを察したのか、目を潤ませ、深々と頭を下げた。


 繁は走った。そして泣いた。


「クッソ……きっと今晩あたりに、二人でやらしいことするんだろうな……チキショー!!」


 そう呟きながらコンビニでビールと弁当と成人雑誌「隣の美人妻」を買った。


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