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未知夢

第7章 誤認

 随分前に定年退職していてもおかしくない様な、背も小さくなったおじいさんだ。


 繁はとりあえず聞いてみた。


「け……警察の方ですよね?」


「そうです」


「あの……朝から乳母車に空き缶を入れたゴミ袋をたくさん積んで、押してトボトボ歩いてたりはしてませんか?」


「こう見えても足腰は若い人には負けまへんで」


 近寄ると膏薬の匂いがした。


 浦賀はゆっくりと椅子に座ると、口をムニャムニャと動かしながら資料に目を通す。


「えっと……竜……きよし……」


「さんずいが抜けてます。滝です。潔じゃなくて繁です。あの……大丈夫ですか?」


 いったいこの人に何を聞かれるのだろうか?


 心做しか心配になってきた。


 浦賀は細く骨の浮き出たシミだらけの手で、ボールペンを取る。


 だが、その手はプルプルと震えていた。




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