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　ピクリとも動かない。


　繁の目には、浦賀の背後にもう一人、羽根のはえた浦賀が立っているように見えた。


「あの……この人、いま……」


「いいから早く出ろ！」


　刑事は強引に繁を引っ張り出した。


　辛気臭い空気を発散させている繁は、訳もわからずに刑事の後ろに付いていく。そして、いくつか気になっている事の中からひとつを選び出してぶつけてみた。


「あの……刑事さんは名前は何て言うんです？」


「何を今さら……」


「いや……あのじいちゃん刑事は浦賀って言ってましたが……」


「お前、ずっと俺の名前を呼んでるじゃねぇか」


　繁は頭を傾げる。


「俺は渕陽刑事ってんだ」


「ふ……ふちひけいじ!?」


「そう。だから、刑事ってのが下の名前だ。渕陽刑事って呼ばれたら普通にフルネームだ」