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お嬢様♡レッスン

第117章 慌ただしい日々

そうであった。

愛し合う事は、身体で想いを伝え合う会話だ。

それを彼女に教えたのは、自分であった筈なのに。

彼女に教えられるとは。

葛城は余裕のない自分に苦笑し、恥じ入った。

彼が綾芽を拘束し、視界を奪っていたネクタイを解くと彼女は力いっぱい葛城を抱き締める。

「いっぱい不安にさせてごめんなさい。私、慎吾さんに甘えてばかりで…。本当は慎吾さんの気持ちを一番大事にしなければいけないのに…」

「綾芽……」

葛城は華奢な綾芽の身体を縋る様に抱き締める。

彼女は分かってくれる。

自分の不安を

自分の迷いも

全てを包み、抱き締めてくれる。

「私達、身体での会話も大事だけれど、もっとちゃんとお喋りもしましょう?他愛のない事も、苦しい気持ちも…。全部…」

そう言うと綾芽は葛城の顔を覗き込む。

「ふふふ…。そうですね。そう言う時間も大切ですね」

葛城は眩しそうに綾芽を見つめ、そして彼女の頬に触れた。


本当に立派になられた。

好奇心が旺盛で、素直。

柔軟で芯のしっかりした女の子。

いや、今では立派な淑女だ。

元々、素養のある方ではあったけれど。

大勢の男達の愛が彼女をここまでに育て上げた。

My Fair Lady───

彼女が全てを受け止めてくれるのであれば。

全てを話そう。

自分の胸の内も。

「綾芽。聞いてくれますか?」

そう言うと葛城は、自分の事を話し始める。

過去の事。

自分の気持ちを。

二人は祖父が帰ってくるまで、お互いの事を話し合いながら、時を過ごしたのだった。

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