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お嬢様♡レッスン

第117章 慌ただしい日々

「キミ達には色んな人の気持ちを背負って前に進んで貰わねばならない。時には心を鬼にしなくてはならない事もあろう」

宗佑は立ち上がると、二人の席の間に立った。

「多くの人間を束ねる事。そこにはそれぞれの悩みや苦しみもある。だからこそ、頂点に立つキミ達は皆の手本とならなければならない」

「お祖父様…」

綾芽は語り掛ける祖父の顔を見上げる。

彼は常に楽しそうで悩みや苦悩等を人には見せない。

自分がそうする事で、彼を目標にする社員達を引っ張っていく。

「キミ達が暗い顔をしていたら、社員達の士気も下がる。そうならない為には、辛い事があっても笑っていなければならない事もある」

葛城は黙って宗佑の話に耳を傾けていた。

一番近くで宗佑の背中を見て来たのは自分である。

それは宗佑がアメリカに拠点を移してからも変わらない。

どんなに辛い事があっても、宗佑はそれを人前では出さない。

葛城の前を除いて。

それはきっと宗佑が自分の事を本当に信頼してくれていたからであろう。

今度は綾芽がそれを引き継ぐ。

自分はそれを支え、常に彼女の笑みを絶やさないようにする。

それが自分の使命であり、綾芽と運命を共にすると言う事だ。

「今は泣いてもいいよ。でも、他では見せてはいけない。二人で励まし合って乗り越えなさい。いいね?」

諭す様な宗佑の言葉に、綾芽は深く頷いた。

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