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橘の恋敵はいずれは東乃宮グループの総裁になる人物だ。

一介の秘書である自分が到底敵う相手ではない事は分かっている。

唯、葛城も黒崎も彼女のバックグラウンドに惹かれている訳ではない。

彼女の人間性に惹かれていると聞いている。

自分はその女性になる事は出来ないけれど、彼等を魅了する女性に近付きたい。

黒崎への強い想いが橘にそう思わせてた。

爽やかな笑顔。

誰にでも分け隔てなく優しい黒崎。

真面目で仕事も出来、面倒見の良い黒崎に橘はどんどん惹かれていった。

その彼も現在は本部に戻ってしまい、逢える機会は極偶にしかない。

明日はその黒崎に久々に逢える。

そう思うと橘の胸は高鳴るのだ。

黒崎が本部に戻ってからも、橘は自分の仕事を一生懸命こなし、彼の連絡先を知っているにも関わらず、連絡はせずに自分を磨く事に精を出した。

それは良い条件の結婚相手を見つけたいという気持ちからではなく、全ては黒崎に自分を見て貰いたい一心での事だった。

叶わない想いかも知れないけれど。

結婚をしてしまう女性を想い続けていたとして、それが彼の幸せなのだろうか。

そしてそれを彼の想い人は望んでいるのだろうか。

余計なお世話かも知れないが、自分が彼を支えられるような存在になれればと橘は思っていた。

変われば変わるものなのだなと、彼女は自分の過去に苦笑せずにはいられない。