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お嬢様♡レッスン

第19章 執事の悩みⅠ(黒崎編)

何度も繰り返して謝る黒崎。

綾芽は一つ溜息を零すと、ベッドに腰を掛けてポンポンと自分の隣を叩く。

「お兄ちゃん、いいから座って」

黒崎は言われるままに、彼女の隣に腰を下ろす。

「私こそ、さっきは扉を勝手に開けてごめんなさい。まさか、その…ああいう事をしているとは思わなかったから…」

「すみません!」

「だから、そんなに謝らないでよ。その『すみません』は、どちらに対してなの?時間になっても戻って来ない事?」

「どちらもです。お嬢様に変な物をお見せしてしまって…」

「そちらは私が許可なく扉を開けてしまったせいだもの。私が謝るべきよね。自分で『勝手に入るな』って言っているのに…」

「お嬢様は御主人様です。使用人の許可なんて要りません」

「使用人とか主とか関係ない。同じ人間じゃない?勝手に踏み込んではいけない事ってあるのに、私ったら…」

「本当にすみません!お嬢様に『お兄ちゃん』なんて呼ばれて勝手に舞い上がっちゃって…。そしたら我慢出来なくなっちゃって…」

「それで自分でしてたの?」

「はい…」

「私にエッチな事、しようとか思わなかったの?」

「そんな事出来ません!」

「どうして?」

「お嬢様の身体の事が心配で…。さっきもお疲れの様だったし…」

「有難う。黒崎さんは優しいね」

「そんな事ないです!今のは唯の言い訳です。俺、自信ないんです。お嬢様を満足させられるのかとか、嫌われたらどうしようとか…本当はそんなどうしようもない奴なんです!唯のネガティブ野郎なんですよ」

「黒崎さん…」

意外だった。

男らしくて爽やかな好青年の黒崎にそんな葛藤がある事に。

「私もね、此処に来たばかりの時には自分に自信なんてなかったよ?今でもそんなに自信がある訳じゃない。けど、皆さんが私を大事にしてくれて『お嬢様』って呼んでくれる度に思うんだ。しっかりしなくちゃって。私がちゃんとしてなかったら、お爺様の顔に泥を塗る事になっちゃうし、私がフラフラして迷ってたら、皆さんを路頭に迷わせる事になっちゃうかもって。私、それだけは嫌なの」

「お嬢様…」

「自信は付いた訳じゃないけど、責任感は少しは付いたみたい。黒崎さんは私の教育係であり、お兄ちゃんなんだから…。頼りにしてるんだからね?」

「俺、自信はないけど頑張ります!お嬢様に頼って貰えるような男になります」

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