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お嬢様♡レッスン

第122章 【番外編】秘書のお仕事Ⅰ

その後の食事の味は、橘には殆ど分からなかった。

速水が気になって仕方が無い。

あれほど恋焦がれていた黒崎が目の前に居ると言うのに。

幾ら速水が美形だからと言って、そんなに直ぐに心変わりをするなんて、自分の黒崎に対する気持ちはそんなに軽いものだったのかと、自分を責める。

これでは、全く成長していないではないか。

葛城に一目惚れをし、次に黒崎。

そして今度は速水だと言うのか。

そんなにコロコロと気持ちが揺れるなんて。

橘の葛藤は続く。

それにまだ出会ったばかりで速水の事を何も知らない。

しかし、バックグラウンドはしっかりしている。

東乃宮で働いていた彼が自分を騙すような事はしないだろう。

でも、だからと言って乗り換えるような事をするのはどうなのだろう。

そう思ってハッとする。

気持ちが速水に動き出している事に。




恋は突然の事故のようにふいに訪れる事もある。

直感が大事な時もある。

タイミング。チャンス。

それを掴めるか。




ついに決心を固めた橘の表情を盗み見ていた速水は、黒崎に『電話がかかって来たから』と言って立ち上がる。

橘の肩をポンと叩くと、彼は店の外へと出て行った。

その後姿を見送ると橘は、黒崎の方へと向き直り深く息を吸う。


振られる為に。

自分の恋の決着を着ける為に。


「黒崎さん!聞いて頂けますか?」


~*Finis*~
2015.12.07.

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