お嬢様♡レッスン
第3章 これがお仕えする者達です、お嬢様
「こちらがお嬢様のお部屋になります」
葛城から部屋への案内を申し付けられた高月が扉を開ける。
ここは東乃宮邸の別館、通称『白鳥(白鳥)館』の3階。
中央の階段から左右に5枚ずつ扉が並ぶ廊下の右手奥にある一室が綾芽の部屋だった。
開かれた扉から中を覗くと、スモーキーなピンク色のグラデーションで纏められた上品な部屋だった。
「お嬢様のお部屋ですよ?中へ入ってお確かめ下さい」
入口で立ち止まって中を覗くだけの綾芽に高月はそう声を掛けた。
綾芽は恐る恐ると言った風に、そろそろと中へ入って来る。
その様は、小動物の様に可愛らしく、そして滑稽だった。
「必要な物は全て取り揃えておりますが、無い物が御座いましたら、何なりとお申し付け下さい」
そう言って高月が頭を下げる。
高月の所作も葛城と同様に流麗である。
綾芽は『執事カフェ』の“なんちゃって執事”ではなく、本物の執事を目の当たりにし、その格の違いに驚いた。
まず、コスプレ感がない。
当たり前と言えば当たり前なのだが。
「お嬢様の本日のスケジュールについて、御説明致しますので、どうぞお座り下さい」
そう言って高月は綾芽にソファに腰を下ろす様に促すと、次にメイドが運んで来たティーセットでお茶を煎れる。
「オレンジピールとカモミールのブレンドティーで御座います」
音もなく置かれたカップから立ち昇る柑橘系の爽やかな香りが、気持ちを元気付けてくれる。
一口含むとオレンジの皮の苦味と甘味、カモミールの持つ甘味が絶妙なハーモニーとなって口一杯に広がった。
「美味しい…」
思わずそう呟く。
「有難う御座います」
またもや仰々しくお辞儀をする高月。
嫌味では無いのだが、庶民の暮らしが長い綾芽には少々息苦しい。
これも慣れなければならない事の1つであろうか。
「あの…高月さん?」
「はい、何でしょう?」
「一々お辞儀しなくても…」
「これは癖の様な物ですので、お気になさらないで下さい」
「はぁ…」
「それに、使用人に敬称は不要で御座います。私の事は『高月』とお呼び下さい」
しかし、自分より年上であろう高月を呼び捨てにするのは綾芽には抵抗感がある。
「年齢は関係御座いません。『立場』の上下。それが全てで御座います」
それなら尚の事、呼び捨てに等出来よう筈もない。
葛城から部屋への案内を申し付けられた高月が扉を開ける。
ここは東乃宮邸の別館、通称『白鳥(白鳥)館』の3階。
中央の階段から左右に5枚ずつ扉が並ぶ廊下の右手奥にある一室が綾芽の部屋だった。
開かれた扉から中を覗くと、スモーキーなピンク色のグラデーションで纏められた上品な部屋だった。
「お嬢様のお部屋ですよ?中へ入ってお確かめ下さい」
入口で立ち止まって中を覗くだけの綾芽に高月はそう声を掛けた。
綾芽は恐る恐ると言った風に、そろそろと中へ入って来る。
その様は、小動物の様に可愛らしく、そして滑稽だった。
「必要な物は全て取り揃えておりますが、無い物が御座いましたら、何なりとお申し付け下さい」
そう言って高月が頭を下げる。
高月の所作も葛城と同様に流麗である。
綾芽は『執事カフェ』の“なんちゃって執事”ではなく、本物の執事を目の当たりにし、その格の違いに驚いた。
まず、コスプレ感がない。
当たり前と言えば当たり前なのだが。
「お嬢様の本日のスケジュールについて、御説明致しますので、どうぞお座り下さい」
そう言って高月は綾芽にソファに腰を下ろす様に促すと、次にメイドが運んで来たティーセットでお茶を煎れる。
「オレンジピールとカモミールのブレンドティーで御座います」
音もなく置かれたカップから立ち昇る柑橘系の爽やかな香りが、気持ちを元気付けてくれる。
一口含むとオレンジの皮の苦味と甘味、カモミールの持つ甘味が絶妙なハーモニーとなって口一杯に広がった。
「美味しい…」
思わずそう呟く。
「有難う御座います」
またもや仰々しくお辞儀をする高月。
嫌味では無いのだが、庶民の暮らしが長い綾芽には少々息苦しい。
これも慣れなければならない事の1つであろうか。
「あの…高月さん?」
「はい、何でしょう?」
「一々お辞儀しなくても…」
「これは癖の様な物ですので、お気になさらないで下さい」
「はぁ…」
「それに、使用人に敬称は不要で御座います。私の事は『高月』とお呼び下さい」
しかし、自分より年上であろう高月を呼び捨てにするのは綾芽には抵抗感がある。
「年齢は関係御座いません。『立場』の上下。それが全てで御座います」
それなら尚の事、呼び捨てに等出来よう筈もない。