テキストサイズ

お嬢様♡レッスン

第32章 お嬢様、絶体絶命

その日の葛城は朝から機嫌が悪かった。

普段、何かあっても感情を微塵も表に出す事の彼にしては珍しい事だった。

不機嫌の理由は寝覚めが悪かったからだ。

目を閉じると高月に抱かれる綾芽の姿がチラついた。

高月の首に綾芽自らが腕を巻き付けた瞬間。

葛城は己の敗北を悟った。

逃げる様に綾芽の部屋を出て自分の部屋に戻り、冷たいシャワーを頭から浴びた。

全ては高月の仕組んだ事かと、冷えた頭で冷静に分析する。

恵莉奈の来訪から、少しずつ歯車が狂いだした。

葛城はそう感じていた。

(さっさと帰って頂こう。あの方が居ると陸な事がない)

葛城は浴室から出ると、スマートフォンで恵莉奈の執事である姫川に早急に迎えに来るようメールを送った。

彼のスマートフォンの先で、綾芽から貰ったキャラクターのストラップが揺れている。

夜中だと言うのに、返信は直ぐに来た。

明日の朝イチで来るとの事だった。

葛城は濡れた髪のまま、ベッドに腰を掛けるとストラップを見詰めた。

この胸の苦しさはなんなのだろう。

自分はどうすれば良かったのだろうか。

普段、執事達からレッスンの報告を受けて居る時には、割り切れていた。

しかし、実際に目の当たりにしてしまうと、その衝撃は大きかった。

最近の葛城は後悔する事が多い。

恵莉奈を抱いた事。

それを綾芽に見られて彼女を傷付けた事。

そして高月に彼女を奪われてしまった事。

様々な後悔が渦となり葛城の心を掻き乱した。

立場と言う理由をつけて、認めなかった。

一人の男として綾芽を求め、結ばれたいと言う欲求を。

何故、もっと早く認めてしまわなかったのだろうか。

それが最大の過ちであったと、葛城はまた後悔する。

もう、遅いのだろうか。

だとしても、一度認めてしまったこの想いを断ち切る事が出来ない。

そんな事を延々と考えていた為、殆ど眠れなかった。

そして、朝イチで迎えに来ると返信してきた、肝心の姫川が姿を表さない。

守衛から、門を潜った事は報告されていると言うのに。

それがまた葛城を苛立たさせた。

さっさと恵莉奈を連れ帰って欲しい。

まさか迷っている訳ではあるまい。

正門から邸迄は、真っ直ぐだ。

別館に向かったのだろうか。

それにしては報告がない。

葛城は妙な胸騒ぎを覚えて、姫川を探す事にした。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ