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お嬢様♡レッスン

第32章 お嬢様、絶体絶命

幼い頃から、心が壊れた母の元で育った彼は、母の愛情も受けられず、愛に飢えていた。

それ故、綾芽に対し多くを求めてしまう。

自分だけを見て欲しい。

自分だけを愛して欲しい。

それが綾芽を苦しめる事になるとは分かっていても。

(大体、お嬢様は隙が有り過ぎる)

それがまた、彼女の魅力であり、人を惹き付ける要素の一つではあり、自分もそれに囚われた一人なのであるが、彼女と恋仲になった今は、それは不安要素でしかない。

この時、高月は綾芽への気持ちに溺れる余り、間違った方向に踏み出してしまっている事に気付いていなかった。

高月が求める物を返すには、まだ綾芽は若く経験も少ない。

勿論、初めから備わっている者もいるが。

「取り敢えず、邸に戻りましょう。お身体を浄めなくては…」

「高月」

「はい」

「その…一緒に入ってくれる?」

綾芽は少し恥ずかしかったが、勇気を振り絞ってそう言った。

そうする事で高月が喜ぶなら。

少しでも彼の不安を取り除けるなら。

そんな想いがあった。

「勿論で御座います!」

高月は満面の笑みを浮かべて答えた。

綾芽はその笑みを見て覚悟を決める。

多分、朝食は昼食と一緒になるなと。

いそいそと綾芽の服を整える高月を見ながら彼女はそう思った。

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