お嬢様♡レッスン
第32章 お嬢様、絶体絶命
「綾芽!!」
現れたのは莉玖だった。
彼は愛馬を散歩させている途中に、偶然、通り掛かり綾芽の叫ぶ声を聴いたのである。
莉玖は、綾芽のあられもない姿に激昂した。
「お前………。綾芽に何してくれてんだぁ!!!」
莉玖は姫川に掴みかかると彼を床に捩じ伏せ、拳を振り下ろした。
何度も。
何度も。
「リク!辞めて!駄目っ!」
綾芽は焦った。
姫川に大怪我をさせてしまったら、折角の莉玖のオリンピック選手候補生の資格が、剥奪されてしまうと思ったからである。
「お願いっ!辞めてっ!誰かっ!」
綾芽は必死に呼び掛ける。
その声を葛城と高月が聞き付けてやって来た。
彼等は姫川と綾芽をそれぞれ探していたのである。
「杜若!お辞めなさい!」
葛城は莉玖を姫川から引き剥がし、高月は綾芽の拘束を解き彼女を抱き締めた。
その光景に葛城の胸は“ズキン”と痛む。
しかし、今は感傷に浸っている場合ではない。
葛城は姫川を立ち上がらせると、頬に一発平手をお見舞いし、そして彼の腕を引きその場を後にした。
「杜若も来なさい」
葛城にそう言われ、莉玖はそれに従った。
恐らく、この後には姫川と莉玖はそれぞれ葛城からお説教を喰らう事になるだろう。
「葛城さん!」
綾芽が葛城を呼び止める。
「なんでしょう?」
葛城が振り向いた時に一瞬だけ見せた表情に綾芽は胸が切なくなった。
口元は僅かに微笑んでいるが、寂しそうな、そして泣いてしまいそうな瞳。
それは本当に一瞬であったが、綾芽の心に焼き付いた。
しかし、綾芽は気付いていない。
自分も同じ様な瞳をしている事に。
「あの、リクの事を叱らないで下さい」
「勿論ですよ?杜若はお嬢様をお守りしただけですから」
葛城は、そう返すと今度こそ姫川と莉玖を連れてその場を立ち去った。
倉庫に二人きりになると、高月はきつく綾芽を抱き締めた。
「高月?苦しい…」
「…………」
「高月?」
「申し訳ありません。もっと早くに駆け付けていれば…」
「大丈夫。リクが助けてくれたもの」
「私が…私が一番に貴女を守りたいのです。貴女の中で全て一番でありたい…」
綾芽の中では、まだ葛城の存在の方が大きい。
高月は先程の綾芽の顔を見て、そう感じた。
彼は綾芽の心の全てを自分に向けさせたい。
現れたのは莉玖だった。
彼は愛馬を散歩させている途中に、偶然、通り掛かり綾芽の叫ぶ声を聴いたのである。
莉玖は、綾芽のあられもない姿に激昂した。
「お前………。綾芽に何してくれてんだぁ!!!」
莉玖は姫川に掴みかかると彼を床に捩じ伏せ、拳を振り下ろした。
何度も。
何度も。
「リク!辞めて!駄目っ!」
綾芽は焦った。
姫川に大怪我をさせてしまったら、折角の莉玖のオリンピック選手候補生の資格が、剥奪されてしまうと思ったからである。
「お願いっ!辞めてっ!誰かっ!」
綾芽は必死に呼び掛ける。
その声を葛城と高月が聞き付けてやって来た。
彼等は姫川と綾芽をそれぞれ探していたのである。
「杜若!お辞めなさい!」
葛城は莉玖を姫川から引き剥がし、高月は綾芽の拘束を解き彼女を抱き締めた。
その光景に葛城の胸は“ズキン”と痛む。
しかし、今は感傷に浸っている場合ではない。
葛城は姫川を立ち上がらせると、頬に一発平手をお見舞いし、そして彼の腕を引きその場を後にした。
「杜若も来なさい」
葛城にそう言われ、莉玖はそれに従った。
恐らく、この後には姫川と莉玖はそれぞれ葛城からお説教を喰らう事になるだろう。
「葛城さん!」
綾芽が葛城を呼び止める。
「なんでしょう?」
葛城が振り向いた時に一瞬だけ見せた表情に綾芽は胸が切なくなった。
口元は僅かに微笑んでいるが、寂しそうな、そして泣いてしまいそうな瞳。
それは本当に一瞬であったが、綾芽の心に焼き付いた。
しかし、綾芽は気付いていない。
自分も同じ様な瞳をしている事に。
「あの、リクの事を叱らないで下さい」
「勿論ですよ?杜若はお嬢様をお守りしただけですから」
葛城は、そう返すと今度こそ姫川と莉玖を連れてその場を立ち去った。
倉庫に二人きりになると、高月はきつく綾芽を抱き締めた。
「高月?苦しい…」
「…………」
「高月?」
「申し訳ありません。もっと早くに駆け付けていれば…」
「大丈夫。リクが助けてくれたもの」
「私が…私が一番に貴女を守りたいのです。貴女の中で全て一番でありたい…」
綾芽の中では、まだ葛城の存在の方が大きい。
高月は先程の綾芽の顔を見て、そう感じた。
彼は綾芽の心の全てを自分に向けさせたい。