テキストサイズ

お嬢様♡レッスン

第36章 お嬢様と執事(恵莉奈×姫川編)

「全く…貴女と言う方は…反省する迄そこでそうしてなさい!」

姫川は、そう言い放つと恵莉奈を置いてその場を離れた。

言われた方の恵莉奈は、ガクッと膝を折り、その場に座り込む。

冷たく硬い大理石の床の上に。

手錠を架けられ、そしてソレは床から突き出したパイプに繋がれている。

動ける範囲はせいぜい2~3m程度。

これは姫川の温情である。

繋いで置いて温情も何もないとは思うが、トイレに届くだけマシなのである。

ここは白鳥館の2階にある客間の一室のバスルーム。

そこに恵莉奈は閉じ込められている。

子供の頃から、恵莉奈はお仕置きとして姫川にこうして浴室に閉じ込められた。

お仕置きではなく、ただ単に姫川の趣味なのではないかと恵莉奈は疑っている。

今回も、きっかけは忘れてしまう程、些細な事だった。

不幸な事に姫川の機嫌が悪かった。

着いて早々、この邸のお嬢様に手を出したらここの執事達にフルボッコにされ、傷が痛む所に恵莉奈の我侭と来たら、多少機嫌が悪いのは自業自得とは言え仕方がない。

いつもなら下の使用人達をこき使って憂さ晴らしするのだが、ここではそうはいかない。

東乃宮一族を束ねる長の家であり、またその使用人達を束ねる家令がいる。

それぞれの家の人事に口を挟まない事にはなってはいるが、目に余る物があれば、トップの権限で姫川を解雇する事など、彼等には容易い事だ。

解雇は姫川にとっては都合が悪い。

恵莉奈と姫川は恋仲だった。

何だかんだ言っても、姫川は恵莉奈を愛している為、彼女の側を離れたくはない。

多少、歪みのある愛ではあるが。

恵莉奈もそれを分かっていて、他の男をつまみ食いしたり、我侭を言って手を焼かせてはいるが、最終的には彼に刃向かう事は出来ない。

彼女もまた、姫川を愛しているからである。

今回、彼女が本家を訪ねた理由はそこにあった。

恵莉奈は姫川と一緒になりたいと考えているが、両親──特に母親が許してくれない。

彼女の母親はプライドが高く、使用人は一時的な快楽の為の道具であって、伴侶とするものではないと考えている。

それに、恵莉奈には兄が居り、家督を継ぐ訳では無いので、必然的に嫁に出す事になる。

我侭に育った娘が、庶民の暮らしに馴染めるとは到底思えない。

父が心配しているのはその点で、彼が反対する理由はそれだけだった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ