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お嬢様♡レッスン

第36章 お嬢様と執事(恵莉奈×姫川編)

それさえ無ければ、娘が幸せになるのであれば、相手のステータス等は問題ではないと考えている。

但し、その事を恵莉奈は知らない。

さて、話を戻そう。

恵莉奈が訪れた理由。

それは、宗佑のたった一人の孫娘の結婚相手として、使用人も認めるらしいと小耳に挟んだからである。

使用人との結婚に寛大な総裁に認めて貰えれば、両親を説得する事も出来よう。

そう恵莉奈は考えて、許しを得る為に家出をしてここまでやって来たのである。

そこまでの気持ちが有りながら、他の男に手を出した恵莉奈に対し、意地悪の一つや二つ、したくなるのは当然の事だろう。

彼が恵莉奈を閉じ込める理由。

それは独占欲の顕れだった。

その事に恵莉奈は気付いているのだろうか。

「う~…こうなったら力技よっ!」

幸い、手錠の繋がれているパイプは細い。

頑張れば折れそうだ。

しかし、折った後、それがどうなるか等、恵莉奈は想像していなかった。

蛇口から水が流れていなければ、そのパイプにも水は流れていないと思っていたのである。

恵莉奈はそれくらい、世間知らずだった。

恵莉奈はガシガシと繋がれている鎖を引っ張り、自由を獲得した。

のだが…

「きゃ━━━!!!」

解放されたと思った次の瞬間、折れたパイプから勢いよく水が吹き出したのだ。

恵莉奈は慌ててその小口を抑えるが、勢いは止まらない。

床にはどんどん水溜りが出来、それが次第に大きくなって行く。

「姫川━━!助けてぇ~!!」

恵莉奈の悲痛な叫び声に何事かとバスルームの扉を開けると、必死に吹き出す水と格闘する彼女の姿があった。

「お嬢様、神様も貴女にお仕置きがしたかった様ですね。助けが来るまで暫くそのまま、それを抑えていなさい」

「そんなっ!」

「助けが来るまでの間です。それくらい出来るでしょう?」

「代わってくれないの?」

恵莉奈の縋る様な目が、姫川の機嫌を少しだけプラスの方向へと引き寄せる。

「貴女が起こした事ですよ?自分で責任を持ちなさい」

姫川はそう冷たく言い放つとスマートフォンを取り出し『助けは呼んで差し上げますから』と言って、何処かに電話を掛ける為に部屋を出て行く。

一人取り残された恵莉奈は、水と格闘しながら姫川が戻って来る事を信じて待っていた。

綾芽の勘違いの発端はこんな馬鹿げた出来事から始まったのだった。

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