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お嬢様♡レッスン

第40章 お爺様の帰国

そんな事をあれこれ思い出している内に邸に着いた様だ。

「流石、羽田からだと近いねぇ」

私は、ドアを開けてくれた黒崎に声を掛ける。

「本日は渋滞にも遭わず幸運でした」

黒崎は控えるように頭を下げ、そう言った。

「うんうん。日頃の私の行いが良いお陰だね!」

「左様でございますね」

「あれ?そこは突っ込むところじゃないの?」

「いえ、私共がこうして元気で働けるのは、旦那様がいつも心を砕いて下さっているからだと感謝しております」

「相変わらず固いね。黒崎は」

「申し訳ございません」

「謝る必要はないよ。運転、ご苦労様。いつも有難う」

私は、彼に労いの言葉を掛けると邸の階段を上る。

「お帰りなさいませ。旦那様」

葛城がいつもの様に出迎えてくれた。

少し緊張した面持ちで。

きっと私にからかわれると身構えているのだろう。

しかし、この場では何も言わない。

楽しみは夕食の時。

綾芽を前にして狼狽えるのを見る方が何倍も楽しそうだから。

ああ。

でも、高月の事がまだ片付いていないのか。

しかし、二人が火花を散らすのを見るのも面白そうだ。

高月の事も今回の滞在中に何とかしなければいけない案件の一つだな。

「綾芽は元気にしているかね?」

「はい。恵莉奈様ともすっかり打ち解けられた様です」

「恵莉奈が来ているのかい?」

「はい」

「やれやれ。厄介事を持ち込んで来たんじゃないだろうね?」

「そうではない様です。唯、旦那様にご相談されたいとの事でした」

「それが厄介な事なんじゃないの?」

恵莉奈と会うのは何年振りだろう。

あの子はいつも私のいない時に訪ねて来るらしいから。

「恵莉奈様も、大分落ち着かれた様です。綾芽様のマナーや振る舞い等のレッスンを率先して指導して下さっておられます」

「へぇ?あの子が?」

そうなのか。

それは会うのが楽しみだ。

階段を上り切ると、葛城が扉を開けてくれる。

さぁ、久々の我が家だ。

アメリカの家に居る時間の方が長いが、やはり生まれ育ったここが一番落ち着く。

私は、束の間の休息を楽しむつもりで、玄関の扉を潜った。

そこには全使用人が顔を揃えて出迎えてくれていた。



『お帰りなさいませ!旦那様』



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