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「ええと、この方が△△△株式会社の高畑社長で、こちらの方が○○○物産の下川専務。それから…」

本日は綾芽のお披露目パーティー当日。

ギリギリまで、招待客を一人でも多く覚えなくてはと、写真とプロフィールカードとの睨めっこの真っ最中である。

「もう～。綾芽さんたら、往生際が悪いわねぇ？覚えられなかったら、ご本人に聞けばいいのよ！私達、まだ若いのよ？いざとなったら高月や葛城が上手くフォローしてくれるわよ！」

恵莉奈は招待客の写真を掲げながら、呆れたいた。

一応、呆れながらも綾芽の暗記に付き合ってくれているのである。

半月程、一緒に生活をしてきて、二人はすっかり仲好くなった様だ。

「そうかもしれないけど…出来るだけ自分で何とかしなくちゃ！」

「駄目よ！そんなんじゃ。最初から完璧を求めたら、後が辛くなるだけよ？助けて貰える時は助けて貰えばいいの！その為の執事なんだから。彼等は私達に奉仕するのが喜びなのよ？」

「そうですよ？綾芽様。私達の喜びや楽しみまで奪わないで下さいね？」

「葛城さん！」

「あら、家令がこんなところでサボっていて宜しいの？」

「サボりに来たわけではありませんよ？綾芽様のご様子を伺いに…」

「それをサボりと言うのではなくて？貴方と言い、高月と言い、伯父様と言い…。いいから、綾芽さんの事は私に任せて頂戴！」

そう言いながら、恵莉奈は葛城の背中をグイグイと押し、部屋から追い出した。

「全くもう！この邸の男共はどれだけ綾芽さんの事が大好きなのかしら…」

「唯、私が頼りないだけかも…」

「何言っているの！そう言う自信のない顔をしちゃ駄目ってあれほど言ったでしょう？」

「すみません…」

恵莉奈の剣幕に綾芽はシュンとする。

恵莉奈は結構スパルタ人間だった。

恐らく、姫川の影響なのだろう。

「そろそろ私もお部屋に戻って着替えなくちゃ！」

そう言って恵莉奈は部屋を出ようと扉のノブに手を掛けたところで、綾芽に呼び止められた。

「どうかした？」

「えっと…今日はパーティーに出席して下さって有難う！それから、色々と教えて下さって有難う！」

「やぁね。何を改まって…」

「ん…。何となく言いたかったの！それだけ。恵莉奈さんのドレス姿、楽しみにしてるわ」

「ふふっ！当然！主役の綾芽さんが霞んでしまうかもしれなくてよ？」