テキストサイズ

お嬢様♡レッスン

第4章 この方がお爺様です、お嬢様

葛城は宗佑の言った通り、スルーしていた。

「ほらね?無視だよ、無視。雇い主を相手に酷いと思わないか?」

宗佑は唇を尖らせ綾芽に訴え掛ける。

(お茶目さんだなー…)

綾芽はふとそう思った途端、笑いが込み上げて来る。

「あはははは!」

「あ、笑ったね。うん。良かった」

「あ…」

大口を開けて笑っていた事に気付いた綾芽は慌てて口を閉じ、手で口元を隠す。

「綾芽、無理する事はない。お爺ちゃんの前では飾らなくて良いよ。公の場と私の場、それをきちんと学んで使い分ければ良いからね?」

「でも、私は未だ何も身に付いていません…」

「当たり前だ。君は今日、突然此処に連れて来られたんだから。まぁ、僕としては早く自慢の孫娘を皆に披露したくて仕方が無いんだけどね」

「そんな!私なんて…」

「綾芽、駄目だよ。『私なんて』は禁句。こんな僕でも一応、グループのトップだ。君はその『たった一人の孫娘』なんだから。『君しか』居ないんだ。この意味が分かるね?」

「……はい」

「済まないね。プレッシャーを掛けるつもりはないんだけどね」

「いえ!今日1日で少しだけですけど、分かった気がします。私、お爺様の自慢の孫に絶対になります!!」

「うん、うん。有難う。僕は余り日本には居ないけど、何かあったら頼って欲しい。あ!そうだ、葛城?」

「はい」

「君さ、綾芽の家庭教師引き受けてくれない?」

「と、申されますと、綾芽様の執事をやれと言う事で御座いますか?」

「ちょっと、言い方が悪いな。君には家の一切合切を任せっきりにしているし、忙しいのは分かる。でも、君が綾芽の側に居てくれたら、僕も安心なんだよ。分かるでしょ?」

「御信頼を頂いているのは有難く存じて居ります」

「だったら、頼むよ」

「高月は優秀な執事です」

「それは分かっている。僕は君に執事をとは言っていない。“教育係”と言ったんだ」

「成程。分かりました。それでは御受け致します」

「宜しく頼むよ!それじゃあ、綾芽、ダイニングに行こうか?」

綾芽をエスコートして立ち上がる。


東乃宮宗佑(ヒガシノミヤソウスケ)

65歳。


我侭坊ちゃんがそのまま大人になった様な男ではあるが、彼の目は確かである。

駒は揃った。

後は誰が綾芽のハートを掴むのか。

それが楽しみでならない宗佑であった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ