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お嬢様♡レッスン

第58章 お嬢様とお兄ちゃん

『待って、お兄ちゃん』

綾芽に呼び止められた黒崎は、振り向かずにそのまま立ち止まった。

「どうかしましたか?」

ヒタヒタと裸足の足音が、近付いて来る。

「お兄ちゃん、タオル…」

「えっ!?」

キョロキョロと黒崎が辺りを見回すと、リネン棚にタオルがあった。

彼はそれを取り上げると、背を向けたまま綾芽にそれを渡す。

綾芽は『有難う』と言って、それを受け取ると身体を拭き始めた。

(なんだ…ちょっぴり期待しちまった…。って俺は何を考えてるんだっ!)

ブンブンと黒崎が頭を振った時だった。

後ろから腰に腕が回された。

「えっ?」

下を向くと綾芽の腕が、自分の腰に巻き着いている。

そして、背中に感じる彼女の体温と柔らかい二つの丘の感触。

(うぉ!?こっ…これは!!)

「お兄ちゃん…。ごめんなさい。ちょっとこのままで居てもいい?」

「綾芽ちゃん…?」

黒崎が動けないまま、固まっていると背中に拡がる温かい何か。

「うっ…。ひっく…」

湿った感触は彼女の涙だった。

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