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お嬢様♡レッスン

第65章 幸せな時間(とき)

黒崎の唇が綾芽の唇から離れると、それは頬に触れ、耳を擽り、首筋から鎖骨へと流れて行く。

彼の唇が、胸の谷間で止まると”チリッ”とした痛みが走る。

独占欲の証。

執事達は何故かそれを付けたがる。

皆、あちこちに付けるので着る服を選ぶのが大変だからと、綾芽は禁止令を出した程だ。

しかし、今はそれを言うつもりはない。

これが最後だから。

思う存分、彼の証を残せばいい。

きっと消えてしまう時は寂しさを感じるだろうと綾芽は思う。

それくらい、黒崎は綾芽の中では大きな存在になっている。

照れ屋で、ちょっぴりヘタレ。

でも一番に自分の事を考えてくれる優しい人。

自信のない時。

不安な時。

『大丈夫だよ』と言って彼に頭を撫でられると安心した。

兄の様に頼りにしていた。

それはこれからも変わらないだろう。

『執事』ではなく、『秘書』として綾芽を支えたいと言ってくれた。

男としてではなく、あくまでも仕える立場として、彼女の傍に居る事を選んだ黒崎。

その広くて深い想いに感謝せずには居られない。

綾芽は黒崎に回した腕に、ギュッと力を込めた。

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