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お嬢様♡レッスン

第73章 夕陽

綾芽は葛城に促されて、甲板へとやって来た。

日が傾いた為なのか、風が冷たい。

葛城は、持ってきたブランケットで綾芽の身体を包んだ。

見渡せば、周りは海。

沈みかけた太陽が真っ赤に燃え、辺りを茜色に染め上げている。

そしてその茜が薄まり紫紺へと溶ける。

日の出は何度か見た事があるが、海に沈む夕日を見るのは、これが初めての綾芽。

刻一刻と移り行く空の色を見つめる。

自然とは、何と美しい事か。

綾芽はそう思わずには居られない。

彼女は、自分の身体に回された葛城の腕をギュッと掴む。

葛城は腕を緩めると、彼女の指に自分の指を絡めるように握った。

綾芽は葛城の方に顔を向けると、彼の唇が優しく重なる。

その二人を操舵室から見守る船員達。

「絵になるお二人ですねぇ…」

航海士が溜息を吐く。

「本当にお似合いだな」

船長も彼に同意すると、視線を夕日に戻す。

彼らは気付いていなかった。

これが、嵐の前の静けさであった事を───。


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