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お嬢様♡レッスン

第77章 お嬢様の行方

綾芽が目を覚ますと、暗がりの中だった。

(ここは何処?)

簡素なベッドの上に自分は居り、波の音が聞こえる。

背中に感じる温もりは誰かを思い起させるが、それが誰なのかが綾芽には分からなかった。

「目…覚めたか?」

温もりの持ち主が身動ぎをし、身を乗り出して綾芽の顔を覗き込む。

日本人の顔ではない。

少し浅黒い肌。

彫の深い顔。

黒い瞳と髪。

口元を覆う濃い髭。

「あの…どちら様でしょう?」

綾芽は疑問をそのまま口にする。

「その言葉…。お前、日本人か?俺はシャール。この船の船長だ」

片言の日本語で答える男。

言葉が通じて綾芽は安堵した。

「あの…私はどうしてここに?」

「海を漂っていたところを拾った。お前こそ、何であんな所にいた?」

男に質問を返されて、綾芽は戸惑った。

どうして海を漂う事になったのだろうか?

何も思い出せない。

「記憶…ないのか?」

男の言葉に頷く綾芽。

彼女は自分が何者なのかを忘れてしまっていた。

「そうか…」

そう言うと男はニヤリと笑う。

綾芽の身体は何かを察知し、ビクッと震えた。


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