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お嬢様♡レッスン

第78章 オークション

ぽっかりと穴の開いた記憶。

大事な事を忘れているという焦燥感。

家族は?

兄弟は?

恋人は?

彼等は自分を探してくれているのだろうか?

”ズキン”

また、激しい頭痛に襲われる。

綾芽は抱えた膝の上に頭を預けて丸くなっていると、部屋の扉が開く音がした。

顔を上げると船長が数人の男を伴って部屋に入って来る。

一人の男は大きな木箱を載せた台車を押していた。

船長以外の人間を見るのはこれが初めてだった。

船長が何かを男達に告げると、彼等は威勢の良い返事を返し、綾芽の腕を両脇から抱える。

「何をするのっ!?」

綾芽は抵抗するように身を捩るが、しっかりと腕を捉えられており、振り切る事が出来ない。

「港に付いた。取り敢えずお前を隠さなければならない」

一人の男がそう言うと、綾芽を木箱に押し入れる。

「暴れられても困るからな…」

他の男が布を綾芽に押し当てて来た。

何か薬品を染み込ませていたようで、刺激臭が鼻の奥に突き刺さる。

綾芽は必死に頭を振って抵抗してみるが、頭を押さえられてしまった。

視界がグニャリと歪んで来る。

そして綾芽は意識を手放したのだった。


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