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お嬢様♡レッスン

第9章 執事の思惑Ⅰ(高月編)

「貴女の反応が、楽しいからです」

にっこり笑って高月は答えた。

(やっぱり)

綾芽も薄々は感じていた。

高月は嫌がる綾芽の反応を楽しんでいる事に。

だから彼女は過剰に反応しない様に心掛ける事にしたのだ。

「そうですか。私は別に、貴方の事を嫌いな訳ではありません。執事としては優秀な方だと、“葛城”に聞いています」

綾芽は葛城の名を敬称を付けた他人行儀な呼び方ではではなく、意図的に呼び捨てた。

他者に対しそうする事は、葛城が綾芽に仕える者として、彼女の傍にいる事を許し、信頼している事を示す。

命令を下す為に呼び捨てるのとは意味が全く違うのだ。

それに高月は気付いた。

葛城は男として綾芽の身体を拓いただけでなく、仕える者としても彼女の心を開いてその中に入ったと言う事に。

(流石は家令として、一切を任される事だけの事はある)

葛城を優秀な男だと認めざるを得ない。

(からかって遊んでいる場合ではないな…)

東乃宮宗佑に一族への列席を許される前に、まず綾芽に認められなければならない。

確かに宗佑には高い評価はされてはいるが、それは業務をこなす能力への評価であり、同列の人間として認められている訳ではない。

身体の関係だけでは綾芽は堕とせない。

そう判断した高月はやり方を変えざるを得なかった。

努めて誠実に。

遊んでしまった分のハンデはあるが、まだ出逢って間もない。

ギャップ萌えという言葉もあるくらいだ。

ここは一つ、誠実な執事を演じよう。

高月は気を引き締め直し、綾芽攻略の策を練るのだった。

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