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お嬢様♡レッスン

第78章 オークション

「私はヘンリーと申します。ロートマン家で執事をさせて頂いております。暫くの間、貴女様のお世話をさせて頂きます」

そう言うと彼は、綾芽に向かってお辞儀をして見せた。

彼の言葉はゆっくりと丁寧なクィーンズ・イングリッシュ。

日本人である、綾芽に配慮したのであろう。

何処かで聞いた事のある様な発音だったが、それが誰に因るものであったのかは思い出せなかった。

そして「バトラー」と言う響きは、綾芽の胸を切なくさせた。

かつて身近にその様な人達が、自分の周りに居たのだろうか。

綾芽は顔を上げた彼をまじまじと見つめる。

短く整えられ撫でつけられた、ハチミツ色の髪。

深い湖の様な碧の瞳。

彫刻の様な整った顔立ち。

背は高く、背筋はピンとしていて、その立ち姿は凛として美しかった。

「あの…。私は奴隷として買われたのでは?」

そう尋ねる綾芽。

思ったよりも言葉がスラスラと出てくる。

その事から、一応、きちんと教育は受けていたのだと綾芽は感じた。

「初めはそのおつもりだった様ですが、貴女をご覧になってお気持ちが変わった様です」

ヘンリーと名乗った男は、彼女の問にそう答えた。


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