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お嬢様♡レッスン

第10章 Lesson 3♥舌を上手に使いましょう

「お嬢様には、英語を始めとして、フランス語、ドイツ語、中国語、スペイン語を自分のお気持ちを相手に伝えられる程度、まぁ日常会話程度でしょうか…それが出来るくらいには覚えて頂きます」

「そんなに?」

「東乃宮グループの主要取引先の言語です。パーティでお話する機会も多いでしょうから、この程度は覚えて頂かないと…」

「わ、分かりました」

「ビジネス用語や専門的な言葉は覚えなくても結構です。秘書や通訳に任せておけば良いのです。唯…」

「唯、なんですか?」

「相手への殺し文句…。ここぞと言う時の口説き文句とでも言いましょうか。それは御自身で伝えた方が効果的です」

「成程…」

「先ずは汎用性の高い英語から参りましょう。必要であれば、スイスのフィニッシングスクールへの留学も考えておいて下さい」

「留学、ですか?」

「はい。全寮制の世界中のセレブの御令嬢が集まる学校です。一緒に学び、生活を共にする事で、ビジネスに役立つパイプラインを引く事が出来るでしょう」

「……」

「どうされました?」

「いえ、お嬢様って結構たいへんなんだなぁ…と」

「こういう事が最初から当たり前の世界にお生まれになれば、そんな事は思わないでしょうね」

「それって私の事を馬鹿にしてます?」

「いいえ、決してその様なつもりは御座いません。整備をされたレールの上を走る者は、自由に好きな道を走る事に憧れ、自分で悪路を整備しながら走らなければならない者は、初めから整った道を走る事に憧れる。最終目的地は同じだとしても、到達までの道程が違う…」

「高月さん?」

「済みません。何でも御座いません。さぁ、続けましょう」

意外にも、高月は色々な事を真面目に、丁寧に教えてくれた。

綾芽が拍子抜けする程に。

本来は優秀な執事なのだ。

だから葛城が綾芽を迎えに出向いた際にも、彼を一緒に同行させたのだと綾芽は今更ながら気付いた。

(それに…)

両親が亡くなってから、東乃宮家に来る迄、毎日泣き暮らし、どう1日を過ごしていたのかを思い出せない程、憔悴し切っていた自分が、高月に出逢い、からかわれる事で、いつの間にか元気になっていた事に綾芽は気付いていた。

“性”と“生”は表裏一体なのかも知れない。

綾芽は漠然とだがそう思った。

それを高月は知っていて、自分に淫らな事をしたのかも知れない。

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