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お嬢様♡レッスン

第85章 夢の中でⅠ

綾芽は目を覚ますと、目尻から雫が零れている事に気付いた。

隣に眠るのは夢の中の彼ではない。



彼は今、どこで何をしているのだろう。

彼と自分の関係は、今、どうなっているのだろう。

記憶を失くす前までの彼との関係は?

愛し合っていた?

それとも、愛は冷めていた?

そんな筈はない。


だって…

まだ彼が恋しい!


彼を想うだけで胸が苦しくて。

彼の傍に居られない事が切なくて。

彼を想い出せないのが悲しくて。



でも、今の自分は隣に眠るウィリアムの婚約者だ。

自分がこの邸に滞在する事を納得して貰う為の偽りの。

ウィリアムの優しさに甘えていた。

記憶が戻らなくても、このままでも幸せなのではないかと思ってしまった事もあった。

しかし、自分には本当に帰らなければならない場所がある。

その事を綾芽は思い出した。

(失われた記憶をちゃんと取り戻そう)

このままではウィリアムにも迷惑が掛かる。

綾芽はそっと起き上がると、机の引き出しからノートを取り出し、ペンを走らせた。

今、見た夢の内容を忘れない内に書き留める為に。




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