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結局、ウィリアムは弟であるフレデリクとの時間を余り取れないまま、海外出張へと出掛けてしまった。

そして、それはフレデリクを不機嫌にさせた。

あの女さえいなければ。

フレデリクは以前にも増して、綾芽の事を敵視するようになった。

どうせ利用されているだけのクセに。

そう思うが、兄の扱いは自分よりも彼女を優先している様な気がしてならない。

イライラが募るばかりだ。

何とか兄の気持ちを自分に向ける事は出来ないものかとフレデリクは考える。

そうだ。

あの女が不貞を働けば、兄も見限るに違いない。

フレデリクはそう考え、ヘンリーを呼び付ける。

「お呼びでしょうか？」

「お前を呼んだのは他でもない。桜子だっけ？あの女を誘惑しろ」

「坊ちゃま、それは出来ません」

誘惑するも何も、ヘンリーは既に綾芽と関係を持っているのだ。

そして、彼女の気持ちが自分の方に向く事はないと分かっている。

「何故だ？」

「主を裏切る事になります」

「僕だってお前の主だろう？」

「そうですが…」