お嬢様♡レッスン
第2章 御覚悟下さい、お嬢様
綾芽は霊園からこれから住む事になる東乃宮家の邸宅迄の道すがら、東乃宮に使える家令・葛城からこれ迄の事を掻い摘んで聞かされていた。
「旦那様は後悔しておいでです。こんなに早くにお亡くなりになるのでしたら、あの時認めるべきだったと…」
綾芽の父・杜若泰芽(カキツバタタイガ)は、東乃宮家に代々仕えてきた家柄の出だった。
頭の回転も早く機転が利き、15歳と若いながらもフットマンから執事に昇進し、行く末は家令にと期待されていた人物であった。
その頭の良さ故、東乃宮氏は直系の跡取りである、綾芽の母・綾音のサポート役として抜擢した。
しかし、それが手痛いミスであった。
若いとは言え、上級使用人として代々仕えてきた杜若の者だ。
主人と恋愛関係になる事は御法度である事は肝に命じてはいたのだが、長い時間を共に過ごす間柄。
いけない事とは理解しつつも、止められない感情が二人の間に芽生えてしまったのだ。
いけない事と理解していたからこそ、燃え上がってしまったのかも知れない。
周囲の反対の中、二人は駆け落ちと言う選択をした。
そして生まれたのが、綾芽であった。
二人が駆け落ちしてからと言う物、東乃宮氏は日本中に手配をし、二人を探した。
しかし、頭も切れ、東乃宮の内情を知っていた泰芽は追っての手を交わしながら事故に逢う日迄、足取りを掴ませなかった。
葛城の話を聞きながら綾芽は、逃げ回っていた為、定職に就く事は出来ず、贅沢な暮らしは出来なかったが、それでも幸せな日々だったと思い返していた。
父母の中は良く、父は妻と娘を、母は夫と娘を溺愛していた。
綾芽の大学進学を機に、彼女は父母の元を離れたが、両親は相変わらず全国を転々としていた。
それでも、月に1度は綾芽の元を訪れ元気な姿を見せてくれていた。
それが突然の事故の知らせである。
綾芽は憔悴し切っていた。
そんな痛々しい綾芽を元気付けるように、穏やかに微笑みながら葛城が話を続ける。
「愛する御両親を亡くされてお気を落とされている事かと存じます。ですから私達を頼って下さい。お爺様にも甘えて下さい。旦那様もそれを望んでおいでです」
「………」
「簡単にはいかないかも知れませんが、私共が貴女をお支え致します」
葛城の低く穏やかな声音が綾芽を包み、いつの間にか彼女は眠りの淵に落ちて行った。
「旦那様は後悔しておいでです。こんなに早くにお亡くなりになるのでしたら、あの時認めるべきだったと…」
綾芽の父・杜若泰芽(カキツバタタイガ)は、東乃宮家に代々仕えてきた家柄の出だった。
頭の回転も早く機転が利き、15歳と若いながらもフットマンから執事に昇進し、行く末は家令にと期待されていた人物であった。
その頭の良さ故、東乃宮氏は直系の跡取りである、綾芽の母・綾音のサポート役として抜擢した。
しかし、それが手痛いミスであった。
若いとは言え、上級使用人として代々仕えてきた杜若の者だ。
主人と恋愛関係になる事は御法度である事は肝に命じてはいたのだが、長い時間を共に過ごす間柄。
いけない事とは理解しつつも、止められない感情が二人の間に芽生えてしまったのだ。
いけない事と理解していたからこそ、燃え上がってしまったのかも知れない。
周囲の反対の中、二人は駆け落ちと言う選択をした。
そして生まれたのが、綾芽であった。
二人が駆け落ちしてからと言う物、東乃宮氏は日本中に手配をし、二人を探した。
しかし、頭も切れ、東乃宮の内情を知っていた泰芽は追っての手を交わしながら事故に逢う日迄、足取りを掴ませなかった。
葛城の話を聞きながら綾芽は、逃げ回っていた為、定職に就く事は出来ず、贅沢な暮らしは出来なかったが、それでも幸せな日々だったと思い返していた。
父母の中は良く、父は妻と娘を、母は夫と娘を溺愛していた。
綾芽の大学進学を機に、彼女は父母の元を離れたが、両親は相変わらず全国を転々としていた。
それでも、月に1度は綾芽の元を訪れ元気な姿を見せてくれていた。
それが突然の事故の知らせである。
綾芽は憔悴し切っていた。
そんな痛々しい綾芽を元気付けるように、穏やかに微笑みながら葛城が話を続ける。
「愛する御両親を亡くされてお気を落とされている事かと存じます。ですから私達を頼って下さい。お爺様にも甘えて下さい。旦那様もそれを望んでおいでです」
「………」
「簡単にはいかないかも知れませんが、私共が貴女をお支え致します」
葛城の低く穏やかな声音が綾芽を包み、いつの間にか彼女は眠りの淵に落ちて行った。