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ウィリアムの休暇の間に、ロンドン郊外に借りた住まいに綾芽とフレデリクは居を移す。

彼等の身の周りの世話をするのは、ヘンリー唯一人。

人に寛容な綾芽だが、今までの経緯から、彼の事をあまり良くは思っていなかった。

独り暮らしをしていた経験から、フレデリクやウィリアムの世話くらいなら、自分が出来るとウィリアムに進言してみたが、彼は『そんな事はさせられない』と取り合ってくれなかった。

ウィリアムとしては、彼女の学ぶ時間を割くのは合理的ではないと感じたからである。

そう言われてしまえば、綾芽も引き下がるしかない。

確かに、綾芽にはやるべき事がある。

婚約者である葛城と離れてまで、残ると決めたのだから、少しでも多くの事を学ばなければならない。

実はヘンリーは少しずつではあるが、変わり始めていたのを綾芽はまだ気付いていない。

ヘンリーは綾芽の婚約者が、元は自分と同じ使用人であった事に驚いていた。

そして、彼女は身分によって自分を見下していたのではない事に気付いたのだ。

彼女が自分に対し冷たい態度を取っていたのは、自分の卑屈な腹の中を何かしら感じ取っていたのではないだろうか。

そう反省したのである。