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お嬢様♡レッスン

第109章 葛城の憂鬱

「須藤さん。私は仕事が出来ない人間を軽蔑はしません。ですが、仕事をしない人間は軽蔑します」

頭の上から凍てつく氷柱の様な言葉が、俯いて床を見つめる須藤の身を目掛けて放たれる。

須藤はその冷たい氷に身体を貫かれた様に身を震わせた。

「ですが、出来れば解雇はしたくはありません。貴女が心を入れ替えて、仕事に励むお気持ちがあるのでしたら、今日の事は忘れます」

葛城はそう言うと、須藤の手をとり立ち上がらせ、彼女の目を見て尋ねる。

「どうしますか?私としては頑張って頂きたいと思いますが、貴女の人生です。貴女がお決めなさい」

そう言うと葛城は、少し目元を優しく緩めた。

「私は………」

須藤は口を開き掛けて、それから言葉を飲み込む。

自分はどうしたいのだろう。

親のコネでこの会社に入り、結婚相手を見つけて結婚して会社を辞めて、子供を産んで…。

そんな風に考えていた。

(でも、それじゃあ駄目なんだわ。一流の男性を捕まえるには、まず、自分が一流でなきゃ…)

自分に何が出来るのだろうか。

「貴女にやる気があるのでしたら、私が叩き直して差し上げますよ?」

(出来るのかな?私に…。ううん。やらなきゃ!そうしなくちゃ、葛城さんに軽蔑されたままだわ)

そう思った須藤の瞳には、力が籠っていた。

「やります!仕事を頑張ります!私を一人前の秘書として認めて頂けるように!!」

須藤は葛城の瞳を真っ直ぐに見つめると、そう答えた。

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