無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

一日の報告書をドキュメントファイルに纏めると、メールに添付をしてトップである宗佑に送信する。

送信完了のメッセージが表示されると、葛城は一息吐いて背凭れに身体を預けた。

疲れた。

彼はブルーライトから目を保護する為の眼鏡を外し、デスクの上に置くと目頭の辺りを指で挟んで揉み込む。

こんな時は『あれ』を見て癒されるのが一番だ。

そう思った葛城は、スマートフォンを取り出すと、保存してある動画ファイルのフォルダを開く。

相変わらず、彼のスマートフォンには綾芽から貰ったマスコットのストラップが揺れていた。

彼はファイル名を指先でタップし、それを再生する。

『慎吾さん。元気ですか？今日のロンドンは快晴です。今日はね、エミリアとノッティング・ヒルの”蚤の市”に来ているの！』

画面いっぱいに映し出されている綾芽の笑顔。

彼女は彼が日本に戻って来てから、こうして度々動画で近況を報告してくれていた。

寂しくないと言えば嘘になる。

自分で納得して決めた事とは言え、自分が知らない綾芽が居る事にも、嫉妬を覚える。

彼女が戻って来たら、絶対に放したりはしないだろう。

それだけは自信を持って言える。

彼は愛しそうにスマートフォンの中の綾芽を見つめながら、画面にそっと口付けた。