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お嬢様♡レッスン

第115章 別離の刻(わかれのとき)

「何か、あっと言う間だったな…」

夕食後、庭で兄と綾芽と団欒を過ごしているフレデリクがぽつりと零した。

明後日からは9月に入る。

それは新学期の始まりであり、彼が学校へと戻らなければならない時でもある。

「そうだね。楽しい時は過ぎるのが早い。同じ速度で時は流れていると言うのに、不思議なものだね」

スコッチ・ウィスキーの香りを楽しみながらグラスを傾けるウィリアムが弟に同意し、しみじみとした口調でそう語る。

「綾芽?本当に有難う。すまなかったね。僕達に付き合わせて…」

そう言うとウィリアムはグラスを両手で包み込み、そこに視線を落とした。

「そんな事…。私の方こそ、色々と勉強も経験もさせて貰ったし、沢山助けて貰ったわ。ウィルは私の大切な恩人だわ」

綾芽はそう言って微笑み、ウィリアムの手に自分の手を重ねて彼の顔を覗き込んだ。

そして、もう一方の手をフレデリクの手に重ねる。

「フレデリクも…。本当に有難う。最初に出会った時は、どうしようかと思ったけれど…。貴方と仲良くなれて、本当に嬉しかった…」

「綾芽……」

「ヘンリーも本当に有難う」

綾芽はロートマン兄弟の手を握り締めながら、傍に控えていたヘンリーにも感謝の気持ちを伝える。

本当に色々な事があった。

記憶を失くし、闇のオークションで奴隷として売られ、そしてウィリアムと出会った。

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