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お嬢様♡レッスン

第115章 別離の刻(わかれのとき)

あの時に彼に救われなければ、今頃、自分はどうなっていたかは分からない。

大金を積んで自分を救ってくれた、ウィリアム。

例え彼の腹の中に裏があったとしても、自分の素性を知っていた彼は、自分を日本に帰してくれるつもりだったのだろう。

そして、使用人としてではなく、婚約者として何不自由ない生活をさせてくれた。

記憶を取り戻してからも、色々な経験をさせてくれ、イギリスの貴族階級の生活を体験させてくれた。

それは、幾ら東乃宮が世界的に有名な企業であり、その令嬢であったとしても、体験出来る事ではない。

歴史や伝統を重んじる英国の人々との、特にそれを重要視する貴族階級の人々との触れ合いは、これからこの国とビジネスでアプローチする際には大きく役立つであろう。

ウィリアムもそれを望んでいる。

彼の為に子を成す事は出来ないが、別な形で彼に自分の愛と受けた恩を返そう。

綾芽はそう思っている。

そしてフレデリク。

始めは我侭で傍若無人な彼にいつの間にか惹かれていた。

日々、心の成長を見せる彼に目が離せなかった。

初めて会った時には、まだ子供だと思っていた彼は、この夏で立派な一人の男として成長したのではないかと感じた。

それを間近で見守れた事は、綾芽にとっても良い経験になったと彼女は思っている。

容姿も然ることながら、人間としての魅力も増したフレデリク。

これからの彼は沢山の女性を魅了するだろう。

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