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お嬢様♡レッスン

第115章 別離の刻(わかれのとき)

「ちょっ!兄さん!?」

「うん。いいね。綾芽の生んだ娘さんを妻にして弟を愛人にするのも」

そう言って悦に入るウィリアム。

それを半ば呆れたようにフレデリクが見る。

そんな二人を見て、綾芽はくすくすと笑い、ヘンリーは静かに三人の飲み物にお代わりを注いだ。

「でも、僕は本気だよ?綾芽が女の子を産んだら、是非、僕の妻にしたい。どうだろうか。考えてくれない?」

ウィリアムはそう言うと綾芽のお腹を撫でた。

いつかここに宿る生命。

彼女の血を引き継ぐ者。

それをロートマン家の血筋と混じり合わせる。

ささやかな彼の夢。

自分は応えられないが、何とかそれを叶えて上げたいと綾芽は思う。

「分かったわ。慎吾さんと相談してみるわね?」

「ふふ…。宜しくね?出来れば僕とフレデリクの二人分頑張ってね!」

「私は子供を産む為の機械か何かなわけ?」

拗ねた様にそう言う綾芽に、ウィリアムは珍しく困った顔を見せる。

「そんな事はないけど…」

そんな二人のやり取りをフレデリクは笑みを浮かべて見ている。

本当にそうなればいいと心の中で思いながら。

本当の事を言えば、綾芽本人が欲しい。

しかし、彼女は葛城を心から愛している。

激しく愛を交わした後、こっそりベッドを抜け出して、バルコニーから遠い空の下に居る恋人を想うように、月を見上げる彼女を何度も見ていた。

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