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色を愛でる

第3章 ねんねんうっさいねん

久しぶりに彼氏ができた。
大阪出身の彼氏ができた。
私は東京産まれ東京育ちだから
方言とはまったく無縁の生活をしていた
もちろんTVとかでは聞いたことあるけど
やっぱり実際に会って話すと新鮮だ。
彼の話す言葉も声も耳に心地よかった。

『なぁ?そう思わへん?』
『そうやんなぁ』
『ばり可愛いで』
『なんでやねん』
『あほやなぁ』

会って会話する度に、
電話で会話する度に、
私はちょこっと関西弁ってやつを
使ってみたくなった。

ある日エレベーターに乗ってたら
彼がチラっと私を見て、
『今日も可愛いやん』
と満足そうな顔をしながら言ってきた

可愛いって褒めてる自分に
酔ってるのと3割と、

可愛い私と付き合ってる
自分に酔ってるの4割と、

私に惚れてるの3割だと思う。

たったの一言でここまで
考える私もどうかと思うけど
すぐに返事をした。

『よー言われるで』

『むかつく』

だって本当の事なんだから
しょうがないじゃん。
私は勝ち誇った顔をした。

『ねぇあのね、タツヤと付き合ってから関西弁使ってみたくなったから、タツヤの真似して言ってみたりするんだっ』

『なんや、かわいい所あるやん』

そう言いながら頭を撫でられた。
あぁ幸せだな。

心の奥底の一番冷え切っていて、
凄く硬い、でもすぐに
壊れちゃいそうな所が
ふにゃふにゃ溶けてった。

本気で嬉しそうな顔をした
タツヤをジッとみたら、
さっきと違って邪念を感じなかった
そうそう、この笑顔が好きになったんだ。

私の大好きなタツヤが
本気で嬉しそうな顔をするから
私はその顔を見れたのが
嬉しくて嬉しくて、
友達と話す時は、
冗談交じりで関西弁を使っていた。

『めっちゃいいですやん』
『ちゃうねん』
『そやろ、ええやろ、えーやん』
『どないなっとんねん』

もう合ってるのかどうかも
分からない関西弁を喋っていた。

喋る度にあの嬉しそうな顔が
頭の中に浮かぶ。

その度に私の顔は勝手に
口角が上がって目尻が下がってしまう。

『なな、嬉しそうな顔してるね』
話をしていたサキにそう言われた。

『うんっなんか関西弁使いたくなっちゃうし、使うとニヤニヤしちゃうんだ!』

『いいですやん!幸せそうでなによりですねん』

お互い顔を見合わせて笑った。









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