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拝啓、ムコ殿!【ARS・O】

第5章 京都見物

イチコとさとぴは、興味深げに作品を鑑賞している。

さとぴは、時に作品に顔を近づけて見入ったり、時に作品から離れて全体を鑑賞したりしていた。

さとぴは、時折イチコに何かを質問している。

イチコは優しくわかりやすく答える。

さとぴは、口を尖らせてイチコの説明にふんふんと聞き入っている。

いい横顔だ。

理屈や理論ではなく、感性で作品を感じている。

画家の息づかいに合わせて、自分も呼吸しているようだ。

イチコに似ている。

イチコがまだ中学生の時は、私も一緒に美術館へ行くことがあった。

イチコも、体中で作品を吸収するように鑑賞していた。

今、イチコとさとぴは同じ顔をして画家の世界を堪能している。

ふたりが別々に歩んできた道が交わることは、すでに決められていたことのような気がした。

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