テキストサイズ

拝啓、ムコ殿!【ARS・O】

第7章 雨

イ「でもお母さん、雨が…。」

イチコは、私の趣旨がわからず困惑している。

母「雨だから、よ。」

私は、さとぴに車に置いていた傘を1本渡した。

母「大野さん、この中では帽子はいらないわよ。」

さとぴは、あっと小さな声をあげたかと思うと、イチコの腕をつかんて車のドアを開けた。

智「あんがと!」

さとぴは車を降りて傘を差すと、イチコの肩を抱いて名画の庭の入り口に走って行った。

こんな雨の日に、好き好んでこんなところに来る奴なんていない。

多分、館内に客はいない。

顔を隠す帽子は必要ない。

ふたりで、堂々と美術を楽しんで。

相合い傘で。

チケットを買って館内に入っていくふたりの後ろ姿を見送った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ