テキストサイズ

拝啓、ムコ殿!【ARS・O】

第9章 出会いと約束

取材が終わって数日たっても、イチコのことが気になってた。

悩んで悩んで、名刺のアドレスにメールした。

智『先日はありがとうございました。若冲についていろいろ話せて楽しかったです。』

そんな、定型の挨拶文みたいな文面だった。

次の日、返事が来た。

イ『アラシノ様。先日は大変お世話になり、ありがとうございました。』

だから、アラシノじゃねぇし。

俺はメールを見ながら笑った。

それから、俺はイチコにアタックした。

何度も断られたが、ようやくイエスの返事をもらった。

嬉しかった。

恋人を得たという喜びではなかった。

離ればなれになっていた双子の兄弟を見つけたような。

自分の半身を取り戻したような。

もうイチコは俺のことをアラシノとは呼ばなくなった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ