テキストサイズ

拝啓、ムコ殿!【ARS・O】

第11章 初めてのコンサート

さとぴが乗ったトロッコがこちらに走って来た。

あちこちで何かを釣っている。

おそらく、ファンのうちわに何か書かれているのだろう。

今度は何か考え込んでいる。

おそらく、うちわにクイズが書かれているのだろう。

わが家に来た時とは全然違う。

基本的には穏やかな表情だけど。
生き生きしている。
キラキラしている。

寝癖もなければ、寝ぼけてもいない。

どちらが本当のさとぴなんだろうか。

どちらも本当のさとぴなんだろうか。

さとぴのトロッコがこちらにかけてきた。

私は胸元でファンライトを振った。
お父さんは手を振った。

さとぴは私たちに気づくと、ほわんと笑った。

さとぴは小指を立てて、腕を高々と上げて見せた。

『ヤ・ク・ソ・ク』

さとぴの口元は、そう言っているように見えた。

さとぴは、風のようにかけ抜けていった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ