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サバイバルヘルパー

第6章 水

 中庭の全貌がハッキリする位置までやってきた。


 たたみ一畳分ほどの、中庭というよりかは、裏に出るための玄関といった感じだった。


 ほうきとちり取り、鶴嘴(つるはし)が壁にかけてある。


 だが、すぐ左側には裏へ出入りできる導線が設けられている。


 俊輔はようやく、そこまで到達した。


「ここは裏庭かなにかかな?」


 見上げれば、空が覗く。


 明るいはずだ。



 裏庭に出ると、やたらと虫がブンブンと舞う。


 それを手で払いながら進む。


「さてさて、緑のジャングルになにがあるかなぁ?」


 誘い込まれるようにやってきた裏庭。


 明るいから行ってみたいという、単純な理由に加え、なにがあるのか確かめたいという好奇心が、俊輔をここまで導いた。


「……っ!!」


 突然、俊輔の心に、遠くで暮らす彼女と街で偶然出会した様な衝撃が走った。


 俊輔は確かめるように近付く。


「マジか……」


 それは、石で出来た太くて丸い筒のようなもの。


 煙突でも、土管でもない。


 しかも、頭に汲水ポンプが取り付けてある。


「井戸だよね……」


 気が高揚し、走り寄る。


「井戸だよね? もしもし、あなた井戸ですよね?」


 昔、井戸という人に会ったのだろうか?


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