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サバイバルヘルパー

第7章 食料調達

 恐る恐る、濡れた手を見る。


 その色は、たった今、生きて流れていたであろう、生命の色だ。


 それが、失われようとしている。


 手がぶるぶると震えだした。今まで感じたことのない、罪悪感に近い感情。


 イノブタはジッと自分を見ている。


「俺が怖いか? 鬼に見えるか? 悪魔に見えるか? ごめんな……本当にごめんな……なんだろな、自分が生きるためにすることって、こんなに辛いことなのか……」


 涙が溢れ出る。


 よく見れば、それはイノブタの目も同じだった。


 泣いているのか、それとも俊輔の落とした涙を、その目で受け止めたのか……。


 止めどなく流れる赤い血潮が、海に繋ぐ河川のように見えた。


 やがて、底にヒタヒタになるくらいの血溜まりが出来た。


 よくある、豚の野外での屠殺方法は、石やハンマーで頭を叩いて気絶させ、頸動脈に切り込みを入れて血抜きをする方法がある。


 その場合、完全に殺してしまうと血が抜きにくくなる。あくまで、気絶で止めておかなくてはならない。


 どのくらい時間が経ったのか?


 イノブタはすでに動かなくなっていた。



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