無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

　俊輔は肉の入った鍋に、洗面器で熱い温泉の湯を入れた。


　浴場の腰掛けを６個ほど沈めると、その上に、鍋を置いた。


「これだと、常に湧いてる温泉の熱で煮豚が出来るだろう。どのくらいかかるかなぁ……」


　ただ、茹でるだけの調理。出来れば醤油がほしかった。


　ふと、奥を見ると、なにも入っていない浴槽があった。


　石を積んで、セメントかなにかで、固めて作ってあるのだろう。


「これは？」


　底に手を当てるが、熱くはない。


「なんだろ？　水風呂だったのかな？　それか、お湯をためて別のお風呂か？」


　中には、壁が剥がれ、崩れて落ちた物が、パラパラと落ちていた。


「ここ……入れないかな？」


　俊輔は手で拾える大きなものを先に取り、洗面器でお湯を汲み、底にたまったものを流す。


「排水溝は生きてるな。それと……なにかここに、詰めるやつがいるな」


　俊輔はここに、お湯をためて、入るつもりだ。


　入るには、まず排水溝に栓をしなければならない。


　だが、そんな都合よく、栓がみつかるわけもなく、ただ、浴槽を見つめ、腕組みをして考えるだけだった。


　排水溝には、十字の金属がはめ込まれている。毛くずやゴミ等が入って、中で詰まらないようにしている。