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サバイバルヘルパー

第9章 いかだ

 野犬が狙うのは、主にイノブタの子供の方だ。


 イノブタはイノシシのような狂暴性も持ち合わせているため、親が突進すると、野犬も吹っ飛ばされることもある。


 浜についた俊輔は、小梅を探した。


「あれ? 婆さんいない」


 いつもの木の根元を覗く。


 以前、俊輔が持ち出してきたタオルがぐちゃぐちゃに固まっていた。


「なんだよこれ……布団にしてる訳でもなさそうだな」


 また、戻ってくるだろう。


 そう、自分に言い聞かせ、昨夜、火にかけた鍋を確認した。


 薄茶色い、粒子が鍋のまわりにこびりついている。


「おっ!! 出来てるねぇ」


 それを指に少しつけて、舐めてみた。


「うん、血圧高い人にはお薦めできない味だ」


 塩だった。


 俊輔は鍋を持ち、吊るして干してある肉の所まで、持っていった。


 だが……。


「あれ? 無い。吊るしてたのに……あれ?」


 ある程度の大きさに切り分けた網に包み、木の枝に吊るしてあった肉がない。


「なんで、なんで? あれ……あれ、嘘だろ」


 肉はひとつもなかった。


「マジか……取られたのか……」



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