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サバイバルヘルパー

第9章 いかだ

 二人は浜で笑い合った。ここまで、声を上げて笑ったのは久しぶりだった。


「じゃ、俊輔さん。私は、ちょっと服を替えてきますので」


「おう、一人で大丈夫か? 山道は危ないから、杖をちゃんと持っていかないと」


「一人で大丈夫ですよ。何度も行ってますから。俊輔さんは、自分やらなければいけないことを、一生懸命、頑張って下さいね」


「あ、うん……わかったよ」


 普段と違う、小梅の対応に、拍子抜けした。


 普通に戻ってくれるのは、ありがたい。


 だが、なにか寂しい気もする。


 本当は小梅も辛いはずだ。


 船が転覆して、運よく助かったものの、どこの誰だかわからない若い男と無人島で暮らすことになったんだ。


 同伴者がどうなったのか、知る術もなく、毎日が不安でしょうがないことだろう。


 すべてを忘れて痴呆症状が出ている時が、一番の救いだ。


 自分より、婆さんの方が強い。


 俊輔はそう思った。


「腐ってちゃいけないな。俺も頑張らなきゃ。婆さんを無事に帰してやらなきゃな」


 俊輔はまず、薪を集め出した。



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