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サバイバルヘルパー

第9章 いかだ

 気が付けば、見覚えのある光景が目に飛び込んできた。


 穏やかな小波の音。潮の香り。


 三角にぶら下がるブルーシート。


「……あれ?」


 ついた。


 ここは、いつもの浜だ。


 いつの間にか、たどり着いていた。


 ゼェゼェと息を切らし、柔らかい砂地に膝をつく。


 自分が見たものは、なんだったんだ。


 あれは、自分の影ではない。あきらかに、そこにいた人だった。


「ゆ……幽霊だ……絶対に幽霊だ。そりゃ、遺体のある井戸があったんだ。怨念がおんねん……なに言ってんだ俺……」 


 追いかけて来ていないか、後ろを見る。




 立っていた。


「どぅぶわぁーーっ!!」


 追いかけてきたのか? あまりの恐ろしさに、斜めむきに前転しながら、逃げまどう。




「おかえり、久美子さん」


「はぁ?」


 その声を聞いて、我にかえる。


 そこに立っていたのは、小梅だった。


「……ば、婆さん?」


 俊輔は力が抜け、砂浜に横たわった。


「はぁぁ……婆さんだぁ……よかったぁぁ」


 包み込むような安堵感に、気持ちを任せる。




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