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サバイバルヘルパー

第9章 いかだ

 小梅がトボトボと、歩いてきた。


「お、婆さん」


 俊輔は小梅の元に駆け寄る。


「婆さんさぁ、この前言ってたお風呂行かないか? さっぱりしようよ」


 小梅の表情が曇る。


「わたし、行かないの」と顔を横に振る。


「なんで!? この前、行く気だったじゃん」


「温泉行かないの。旅館、行かないの」


「なんだよそれ……気持ちいいぜ」


 確かに、山道を移動して、旅館に連れて行くのはキツいかもしれない。


 やはり、普通の状態の時と、なにか心の中で変わるのだろう。


「わかった。じゃあ、無理にとは言わない。でも、婆さん。あっちこっちうろうろしちゃダメだ。本当に危ないから」


 わかっているのか、わかっていないのか、小梅の口から返事はない。


「あの、お昼ごろに一度戻るからね。涼しい場所にいるんだよ。喉が渇いたら、水を……」


 鍋に入れていた水が無い。


 また汲みにいかなければならない。


 ペットボトルをバッグに入れて、帰りに汲んでくることにした。


 浜にはまた、違うペットボトルが流されてきていた。


 これも、すかさず回収した。



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