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サバイバルヘルパー

第9章 いかだ

「婆さん」


 呼んでみた。


 だが、返事ひとつない。


「婆さーん、もう、戻ってこいよぉーーっ!! 暗くなってきたよーーぃ」


 また、意味なく徘徊しているのだろうか?


 夕飯の豚骨スープももう、底をつく。


 何度も火をつけて煮込んでいるため、夏の炎天下でも腐らずにもってくれた。


 ひょっとしたら、多少は傷んでいたのかもしれない。


 だが、なんともないってことは、それだけ胃が野生に慣れてきたのだろう。


 燻製も、涼しい場所に置いている。これは、まだ大丈夫のようだ。


「今日は燻製と残りのスープを食うか。婆さーん、飯だよーーっ!!」


 返事がない。


「おいおい……食ったら探しにいくか……でも、暗くなると危ないしなぁ」


 一人で大工仕事を頑張った分、疲れて、お腹がペコペコに空いている。


 どうにも食わないと、力が出ない。


 俊輔はスープをぐい飲みすると、立ち上がって、燻製をかじりながら歩き出した。


「婆さーん、どこだ?」


 周辺にはいない。


 遺体があった井戸のある、廃屋に向かう。


 怖いから中には入らない。



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