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サバイバルヘルパー

第9章 いかだ

 外から呼び掛けるが、返事はない。


「あの婆さん、呼んでも返事が無いときあるからなぁ……」


 恐々、中を覗く。


「なんかの呪いかよ……こんな時間に、また廃墟に呼ばれるなんてよ」


 暗くて見えないが、人の気配はなさそうだ。


「はい、いない。帰ろう」


 廃屋を後にしようと、振り向いた。


 いた。


「どぅおわぁーーっ!!」


 また首だけ、のけ反った。


 こんなのを繰り返すと、頚椎がヤバい。


「なんで、真後ろにいやがるんだ婆さんっ!!」


 小梅はおどおどした表情を見せた。


 怒られたと思っているようだ。


「ごめんなさい久美子さん」


「まだ、そのバージョンだな。音もなく後ろに忍び寄るのは、やめてくれないかなぁ……マジで怖いからさぁ」


「探してたのよぅ」


「なにを?」


 小梅は俊輔を指差した。


「いや、俺はずっと浜にいたじゃない。いかだを作ってたよ」


「だって、どこにいるかね、わからないもんですからね、寂しくなったからね、ここに探しにきたの」


「ここには、今はいたけど、普段は通るだけで、めったにいないからね」



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