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サバイバルヘルパー

第10章 嵐と小梅

 頭が水面から出せない。


 どう、出していいのかわからない。


 波の高さが荒くなってくる。


 俊輔の後ろから何かが迫ってきた。


 それは、俊輔が廃屋から持ち出してきた、大きな板だ。


 とっさにそれにつかまった。


 大きく波に揺られながら、俊輔は板にしがみつく。


『パニックになるな……パニックになるな……判断しろ見極めろ』


 この時の俊輔は、何よりも強かった。


 大自然の猛威に、正面から逆らっていた。


 負けっぱなし、逃げっぱなしの大学生が、逃げなければいけない状況になって、逃げずに向かっていった。


 死ぬかもしれない危険なことをして、バカじゃないかと罵られるだろう。


 バカでもいい。生きてりゃなんとかなる。


 もっとバカがいたから……。


 いかだに近付いていた。


 もう、2メートル先にいかだがある。


 何度も波をかぶりながら、必死に身を任せる。今度は無理に逆らわず流れに身を任せてみた。


 そして、ついにいかだに接近。あと少し、手を伸ばせば届く。


 そこに、もう一人のバカがいた。



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